(1)ミロンガとは?



- Aco -

レッスンの補填の第一シリーズとして、タンゴ文化の核ともいえる「ミロンガ」をテーマに取り上げます。

そもそもミロンガとは何か、ご存知でしょうか。

この言葉はタンゴ界において2つの意味で用いられており、初心者のうちは混乱するのでその解説から入ります。ご存知の方は飛ばしていただいて大丈夫です。


ミロンガという言葉が示す意味のひとつめは、「音楽の形式」です。

タンゴ音楽はその拍子の取り方によって「タンゴ」「ワルツ」「ミロンガ」と3つの形式があり、うんと大雑把に説明すると、「2拍子」の音楽が「ミロンガ」と呼ばれます。

レッスンで講師から「今日はミロンガを練習しましょう」と言われたら、それは「2拍子のタンゴ音楽で踊る練習をしましょう」ということになるわけですね。

ミロンガ曲として有名な曲には下記があります。


さて、もう一つの意味の方が、このシリーズでとりあげたい中心的テーマです。

こちらの「ミロンガ」が指すのは、「タンゴを踊るためのダンスパーティー」です。踊れるだけの空間のある場所に人々が集まり、礼儀正しく誘いあい、自由に踊るイベントのことです。

タンゴはそもそも、宮廷やステージで踊ることを想定して生まれたダンスではありません。港町ブエノスアイレスの庶民が酒場などで集まり、憂さ晴らしや、男女のかけひきも含めた社交のために踊るダンスでした。

それがだんだん洗練されていってできあがったタンゴを踊る場、そうしたイベント全般のことを、いつしか「ミロンガ」と呼ぶようになったのです。


タンゴが生まれて100年以上の月日が流れましたが、タンゴ文化を支えるコアは今も変わらずミロンガです。ここ日本でも、各タンゴ教室や、プロアマ問わないタンゴ愛好家たちが日夜、大小さまざまなミロンガを主催しています。

集まる人たちの国民性や関係性、タンゴの技量、主催者の考え方などによって、場で共有されるルールは変わります。

ただし、一緒に時間を過ごす人たちを不快にさせないための最低限の共通マナーはやはり存在しますし、本場ブエノスアイレスを中心に、多くの場で脈々と受け継がれてきた独特の「伝統的作法」もあります。

このシリーズでは、数ある考え方のひとつとしてではありますが、私たちの学んできたマナー、ルールについて解説していけたらと思っています。


ちなみに、私がタンゴを始めたのは23歳の時。初めて「ミロンガ」という言葉を耳にしたときは、「おもしろい言葉だな」と感じたことを覚えています。

とっさに思い浮かんだのは、漫画『ドラゴンボール』に出てくるナメック星の神龍「ポルンガ」でした……というのは完全に余談ですが(笑)、日本人にとって耳馴染みのない響きの言葉ではあると思います。

タンゴの評論で有名な高場将美氏などの解説によれば、その語源はアフリカの言語にあるそうです。重ねて説明すれば、タンゴ自体が、アフリカ音楽の影響も受けつつ生まれた音楽様式だと言われています。こうした歴史的経緯も知っていると、言葉ひとつひとつからもタンゴの奥深さを味わえますね。


最後に、まだミロンガに参加したことがないという方のために、ミロンガの動画をひとつご紹介します。
これはスペインで行われたミロンガで、とても雰囲気の良い場になっていると思います。イメージがわかないという方はご覧になってみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=bOndI-qlYUs&feature=youtu.be